食の中でも和を感じさせる物は色々と有りますが、和の食べ物が数多く並ぶ京都の商店の中でも、一風変わった品揃えで店を構えている老舗があります。
それが、京都の繁華街で知られる四条通りの交差点の角に本店を構える「永楽屋(えいらくや)」です。
今回は、その永楽屋の取り扱う品の特徴的なラインナップと、その成り立ちを紹介していきましょう。
永楽屋の始まりと今
今から約百年近く前、大阪で永楽屋の前身である齋田永三郎商店が創業されました。
元は店の広さも4坪しかない小さな店舗ではありましたが、創業者である齋田永三郎の頑張りにより、事業所の数も増え、そして海外にも主張所を展開するにまで至ります。
しかしながら、折しも時は激動の時代でもあり、その煽りを受けた齋田永三郎商店は店をたたむ事となり、齋田永三郎氏も故郷である京都へと戻る事となります。
ですが、店を畳んだと言っても、齋田永三郎氏の商才までもが無くなったわけではありません。
京都の一角で料理屋を営みながらも商売を続け、そして今の本店がある四条通りに永楽屋を創業します。
今でこそ京都は国内のみならず海外でも名を轟かせる観光地に、そして永楽屋のある四条通りも京都を代表する歓楽街ではありますが、永楽屋の創業当時は終戦直後の年でもあり、四条通りも華やかな歓楽街という訳ではありませんでした。
ですが、永楽屋に続く様に続々と店が並んでいき、大手の百貨店などが付近へと移転してくるなどして、今日の京都の四条通りの姿を作り上げたのです。
他に類を見ない商品ジャンルの組み合わせ
永楽屋の特徴を一つ上げるならば、取り扱っている商品のジャンルでしょう。
永楽屋が主に商っているのは「菓子」と「佃煮」の二種。
甘い物としょっぱい物と言う相反する様な品揃えですが、この双方が共存して盛り上げて来たのが永楽屋という店なのです。
この品揃えの方針は、齋田永三郎氏が創業当時の品不足が蔓延する時代の中でも手に入る物を苦心して見つけ、そして満足な品をお客へと出せる物を考えて取り揃えた品が元となっており、その流れが現在でも受け継がれている訳です。
相反する食べ物のラインナップを取り扱っていると言っても、料理屋を営んだ事もある齋田永三郎氏の食への誠実な姿勢も受け継がれており、永楽屋の作り上げた和菓子の琥珀と称される寒天菓子「柚子こゞり」や、小さな椎茸を使った佃煮の「一と口椎茸」を代表に、そのどれもが今でも高い人気が有ります。
人気の銘菓と佃煮とカフェ
永楽屋の銘菓として知られる琥珀の「柚子こゞり」は、宝石の琥珀の様な透き通った煌びやかさがあり、中に閉じ込められた柚子の香りと味が優雅さを感じさせ、お茶の席に添えれば見た目と味の両方を満足させてくれる和菓子です。
佃煮の「一と口椎茸」も、椎茸の持つ旨味を佃煮の甘辛い味付けが引き立て、その心地良い食感と味が白いご飯との相性も抜群で、箸が止まらなくなる美味しさです。
その他の京佃煮の味も素晴らしく、この味に惹き込まれると、食卓に乗せる逸品として手放せなくなります。
京都の本店では、和の雰囲気を盛り込んだジュエリーショップを思わせる店内のショーケースの中に永楽屋を代表とする品々が華やかに並べられており、雅さを演出すると共に味と質への自信を表しています。
今では京都の中でも数店舗、東京や大阪にも支店を持つ様にまで大きくなった永楽屋ですが、京都の本店には支店には無い特徴が一つあります。
それは、二階に喫茶室がある事です。
このカフェも京都の四条通りに店を開いた当初に作られた物で、近年改装された内装は、和の作りの建物の中に洋の雰囲気を纏わせた装いが施されていて、用意されているメニューも下の店舗にある和菓子や佃煮に負けない美味しさの物ばかりです。
「和菓子」に「佃煮」そして「カフェ」と、少々不思議な組み合わせではありますが、京都の一等地で長年営業してきた事からも分かる通り、永楽屋の品々は素晴らしい物ばかりです。
四条通りの繁華街へと足を運ぶのであれば、是非とも永楽屋で京土産を買い求め、二階にある喫茶室で休憩をしてみてはいかがでしょうか。