年中観光客で賑わう京都の中でも、どこか落ち着いた雰囲気と、のんびりとした空気が漂う宇治市。
平安時代に貴族の別荘地として栄え、源氏物語の舞台や様々な歌に詠われた地として有名な宇治ですが、その物語や和歌と同じく千年もの長い歴史を刻んできた場所が多々あります。
今回は、そんな宇治の中でも、これからも後世に残るであろう観光名所をご紹介していきましょう。
世界遺産の「平等院」
宇治に行くのであれば世界遺産ともなっている「平等院」は外せません。
平等院が建立された約千年前、世間では末法と呼ばれる一種の終末思想が流行っていました。
そんな最中、藤原頼通が建立したのが後の平等院で、救いを求めて極楽浄土をイメージして建てられたのが、かの「平等院鳳凰堂」です。
その景観は極楽浄土と言うにふさわしく、空を映し出す大きな阿字池の中に建つ鳳凰堂の姿は、まさしく浄土を表す佇まいです。
しかも、2016年に終えた大改修を経て、今では建立当時の色鮮やかな姿に蘇り、輝かしさを取り戻しました。
平等院の境内には鳳凰堂以外にも貴重な物が数多くあり、鳳凰堂と同じく浄土をイメージした「浄土式庭園」、天下の三名鐘と称えられる「梵鐘」、歴史的な文化財を保全し公開している「鳳翔館」と見どころが満載です。
平等院の境内を見終わっても、周辺にはまだまだ見どころがあります。
平等院へと繋がる「平等院表参道」は、環境省の選定した「かおり風景100選」の地に選ばれており、平等院表参道に連なる商店街の道では茶を煎じた心地良い香りを楽しめます。
その商店街の中には、茶の宇治を代表する名店が数多くあるだけでなく「上林記念館」の様な茶に関する博物館もあり、歴史観光とグルメとを同時に叶えるスポットなのです。
悠久の時を経て来た「宇治川」
宇治市の中を流れる宇治川。
その宇井川にも歴史的な建造物や伝統があります。
平等院から宇治市の東側へと向かうと、先ず見えてくるのが宇治川に架かる「宇治橋」ですが、その宇治橋は、西暦646年頃に架けられた日本最古の橋と言われており、源氏物語や古今和歌集にも載っています。
橋の西側には紫式部の像があり、宇治川と宇治橋周辺が古くから伝わる物語や伝承の舞台となっている事が感じられます。
宇治橋にほど近い宇治川沿いには「宇治公園」があり、ここにも史跡がいくつかあり、宇治公園から繋がっている宇治川の中州である「塔の島」にある石塔は日本最大の大きさを誇り、国の重要文化財に指定されています。
その塔の島を中継し宇治川の西と東を回遊も出来るので、宇治観光の中継地点や休憩にもぴったりの場所です。
宇治川には現代まで息づく伝統も残っており「宇治川の鵜飼」も有名です。
時期によっては、その鵜飼を見学できますし、遊覧船なども有りますので、観光中にゆったりと宇治川を下り、川の風に吹かれながら景色を楽しむのも良いでしょう。
自然と人工物の織りなす壮大な景色を楽しみたいのであれば、少し宇治川の上流へと昇り「天ヶ瀬吊り橋」と「天ヶ瀬ダム」へと行く事をお勧めします。
この二か所も宇治の観光名所として人気のスポットです。
宇治の名の元となった神を祭った神社
宇治川を挟み平等院の反対側、東側の地には「宇治神社」と「宇治上神社」があります。
宇治神社と宇治上神社は、対を成す二社一体の神社で、宇治上神社の本殿は現存する神社建築の中で最古と言われています。
宇治上神社は京都の他の観光名所の様な華やかさはありませんが、その歴史を感じさせる作りと荘厳な雰囲気からは、得も言われぬものを感じるでしょう。
境内には、宇治七名水の中で唯一現存する「桐原水」と言われる湧水が湧いており、宇治の名産であるお茶とは切っても切り離せない希少な水源もあります。
宇治神社の方は宇治上神社とは打って変わり、綺麗な朱色で飾られ、境内のあちこりに「うさぎ」を象った像やお土産が散見されます。
その兎は、宇治神社と宇治上神社に祭られている祭神の「菟道稚郎子命(うぢのわきいらつこのみことの)」と関りがあり、その菟道稚郎子命は宇治の地名と深い関係が有ります。
大昔、菟道稚郎子命が道に迷った際に一羽の兎が現れ、その兎が菟道稚郎子命を道案内をしたとの少しメルヘンな逸話があり、宇治神社では兎を神の使いとして大事にしているそうです。
その兎の案内を受けた菟道稚郎子命の「菟道(うぢ)」が今の「宇治(うじ)」の名の元となっているのです。
有名な茶屋「通園」そして「北川半兵衛」
お茶で有名な宇治市ですが、その中でも観光名所となりうる茶屋があります。
それが「通園(つうえん)」です。
通園は、日本の茶屋の中でも歴史が古く、創業850年を超える老舗として名が知れ渡っており、豊臣秀吉や徳川家康などの名だたる大名が訪れた記録がある茶屋です。
小説の宮本武蔵などの物語にも登場し、日本屈指の知名度を誇る茶屋と言えます。
宇治でお茶を楽しみたいのであれば、「通園」を観光がてら訪れて、お茶を飲んでみてはいかがでしょうか?
また、宇治にはないのですが私のおすすめは祇園に店を構える「祇園 北川半兵衛」のカフェです!ここではお茶の飲み比べも出来、最高級の抹茶も飲めます。夜カフェもやっているので、宇治観光が終わったらぜひ行ってみてください!
源氏物語の世界を体感する「源氏物語ミュージアム」
源氏物語に興味を持って宇治に訪れたなら、この「源氏物語ミュージアム」も外せません!
この源氏物語ミュージアムは、源氏物語の宇治十帖の舞台となった場所に建っており、館内には源氏物語の貴重な資料と共に、光源氏の住まいや物語で出て来た様々な物を再現した展示物があります。
毎時間ごとに特別制作された映画の放映なども行っており、その映像や展示物を通して物語の世界に浸る事ができ、源氏物語が好きな方には大満足な施設です。
館内では、当時の平安貴族の生活様式や趣味や娯楽などの紹介も行っており、源氏物語に詳しくなくても楽しめる作りになっています。
喫茶店や充実したお土産コーナーも有りますので、一緒に来た人達と宇治の茶を楽しみながら源氏物語の話に花を咲かせてはいかがでしょうか?
宇治の雰囲気を満喫する散策道
京都など古都での観光の目玉は、なにも史跡や観光名所だけではありません。
その周囲の建物や植物が織りなす、古都全体の雰囲気も大切な物です。
それを満喫できるのが「琴坂」と「さわらびの道」と「あじろぎの道」です。
琴坂は宇治の東側にある興聖寺へと続く参道で、古い石垣の間を通る道の両側には、もみじの古木が立ち並び、春と夏は青紅葉と石垣とが織りなす清涼感を、秋には色鮮やかに染まった紅葉の郷愁感を感じさせます。
さわらびの道は宇治上神社と源氏物語ミュージアムとの間にある遊歩道で、古い建物や古跡の間を通っています。
こちらも新緑の時期や紅葉が見物ですので、宇治の観光で宇治上神社か源氏物語ミュージアムに立ち寄るのであれば、さわらびの道ものんびりと歩いて古都の雰囲気を感じてみてください。
あじろぎの道は宇治川の西岸に沿って通っており、川に沿って茶屋やお食事処、お土産屋や旅館が立ち並び、宇治川を眺めながら散策の出来る賑やかな遊歩道です。
旅先での散策や散歩が好きな方は、この三つの道を歩いてみれば、きっと宇治の雰囲気を満喫できるでしょう。
何かと便利な「京阪宇治駅前観光案内所」
最後にご紹介するのは史跡や観光名所ではありませんが、その観光を便利にするための施設です。
京阪宇治駅前観光案内所は京阪宇治駅のロータリーにあり、年始年末を除き観光案内のスタッフが常駐しており、当日のイベントや最適な観光プランをサポートしてくれます。
京都の12市町村のパンフレットを完備しているだけでなく、そこで当日の観光コースを巡るタクシーなどの手配も行ってくれますので、宇治観光をする際に利用すると色々と便利な場所です。
位置的にも宇治観光の出発点にぴったりの所にありますので、ここを起点に宇治の市内を巡って見てはいかがでしょうか?
京都の宇治市には、他の観光地にはない物語と史跡があります。
それらの多くは、今の日本の文化の基礎となった物ばかりです。
宇治に観光に行くのであれば、緑豊かな自然風景と共に、日本文化の元となった場所や歴史を楽しんでみてください!