日頃、緑茶を淹れて飲んでいる家の食卓の上には、茶葉を入れた「茶筒」が置かれていると思います。
円筒の缶の様な形をしており、蓋を開けると更に内蓋があり、その内蓋も開けると中に保管されている茶葉の心地よい香りが漂います。
その茶筒は、どういった経緯で生まれて来たのか?
そんな気になる方に、今回は茶筒の生まれから説明していきましょう。
茶筒の生まれた時代
茶筒を説明するには、先ず「お茶」の事を知らねばなりません。
日本の記録にお茶が登場したのは、古くは奈良時代からです。
しばらくの間は身分の高い人々の間でのみ嗜まれる程度でしたが、戦国時代を経て江戸時代になると、茶葉の生産量が増え庶民の間でも飲まれる様になりました。
しかしながら、武家や公家で飲まれるお茶は今で言う「抹茶」の茶葉を粉状にした物が主であり、一般に広まったのは永谷宋円が確立した茶葉を煎じて飲む方法の「煎茶」でした。
煎茶は、淹れ方も、そして飲み方も手軽だった事もあり、茶葉の生産量の増加と共に一気に世に広まっていきます。
そして、その煎茶の茶葉を、飲み方と同様に手軽に保存するために「茶筒」が作られ使われ始めました。
構造と素材の変化
当時の人々も茶葉は湿気に弱く、密閉しておかねば茶葉の香気が飛んでしまうという事に頭を悩ませました。
とは言え、茶道に使われる茶道具の「茶入れ」などは飾りつけや値段の点で手が出しにくく、薬効のある物を保存していた木筒などでは小さくて不便だったので、家庭で茶葉を保存するのにちょうど良い大きさで、かつ庶民でも手が出せる小物として「茶筒」が生まれたのです。
初期は木製の物か、少し奮発して漆器の物が流通していましたが、金属を薄い板状にする技術が浸透してくると、それと共に茶筒も金属製の缶の形へと変貌を遂げ、その過程で、さらに気密性を高めるべく、蓋を外蓋と内蓋を備える二重構造へと改良が重ねられ現代の茶筒の形へとなりました。
現在でも重宝される茶筒
急須や湯呑と同様、茶筒はお茶を淹れる時には欠かせない物ですが、副次的な目的としてはインテリアの役割もあります。
昔よりも素材の種類も外見も多様になった事も有り、木目を生かした物や漆器に、磨き上げた赤茶の光沢が面白い銅、光沢と柄を楽しめるガラスといった色々な茶筒があります。
茶葉を取り扱う老舗でも店独自の茶筒を用意してある所が多く、お茶の飲み比べと一緒に茶筒のコレクションを楽しむという人も居ます。
お気に入りの茶筒を手に入れたなら、食卓や台所の一角に、急須と湯飲みと茶筒を乗せた盆を置いておくだけでも、絵になるという物です。
最後に茶筒選びのコツを伝授しますと、気密性や色や柄を重視するのも良いのですが、大きさにも気を配りましょう。
現代の密封パックの性能が良いため、茶葉を買うと賞味期限が長い事に驚きますが、実際には開封してから1ヵ月程度が茶葉の賞味期限の目安となります。
ですので、その一ヵ月で飲み切れる程度の茶葉が入る茶筒を選ぶのが最善と言えます。